第4章

午前三時。

重い玄関の扉が開く音に、私はソファから身を起こした。

アルコールと、高田桜子の纏う甘ったるい香水の匂い。二つの匂いは不快に混じり合い、この家の空気を汚していく。

「宗司ぃ、すっごく楽しかった……」

舌の回らない、媚びるような声。

「一人で寝るの、怖いから……一緒にいてくれる?」

高田桜子はつま先立ちになり、赤い唇を宗司に寄せる。

宗司は、寸でのところで顔を逸らした。その視線の先に、闇の中の私を捉えたからだろう。

パチン、とリビングの照明が灯る。

ソファに静かに腰掛ける私を見て、宗司の顔に気まずさと驚きが浮かんだ。

「……初香。帰っていたのか」

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