第5章

麻酔が効き始め、手術室の無影灯が、私の瞳の中でゆっくりと滲んでいく。

医師や看護師の声が水底から聞こえるように遠ざかり、弱々しく反響する。

「初香さん、リラックスしてください。すぐに終わりますから……」

意識が身体から遊離していく感覚。目の前の白い天井は一面の霧となり、その向こうに、真新しい制服に身を包んだ十六歳の私がいた。

人生で最も誇らしかった日。全国でもトップクラスの高校に、私は首席で合格した。

そして、高田桜子、藤原宗司、そして――私が愛した唯一の男、藤原誠も、この学び舎にいた。

そこから、悪夢は始まった。

高校時代の記憶が、堰を切ったように押し寄せる。

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