第6章
初香は、魂が抜けたように立ち尽くす高田桜子を見ても、心は凪のように静かだった。
この対峙は、遅かれ早かれ訪れる運命。ただ、その時が来ただけのこと。
「宗司さん……あなた、何を言っているの……」
高田桜子の声は震え、大粒の涙が美しい瞳からこぼれ落ちた。
宗司は二人の女の間に立ち、引き裂かれるような表情で唇を噛む。何かを言いかけては、言葉を飲み込んだ。
その姿に、初香は最後の憐れみさえ消え失せるのを感じた。
彼女はゆっくりと立ち上がり、乱れた服を何事もなかったかのように整えると、高田桜子へと歩み寄る。静まり返ったリビングに、ヒールの音だけが冷たく響いた。
「高田さん。す...
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