第7章

初香はマンションの窓際に腰掛け、指でタブレットの画面を静かに滑らせた。港区の高級ホテルで間もなく開催される、藤原宗司と高田桜子の婚約披露宴に関する報道を閲覧している。

メディアはこぞってこのビジネス界の一大イベントを報じており、ある記者は式典がメディアによる生中継とネット配信で完全公開されるとリークしていた。

これが高田桜子の差し金であることは、初香には分かっていた。

藤原宗司は高田を守るため、自ら生中継を提案するはずがない。高田桜子だけだ。おそらく、衆目の前で愛を見せつけたいがために、生中継を提案したのだろう。

窓の外では東京の夜景が煌びやかに輝いているが、初香の視線はそ...

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