第76章

「茅野さん、一緒に温泉旅行に行かない？」

山田成は一日一晩考えた末、やはり佐藤玲奈の言う通りにして、茅野青を誘ってみることに決めた。

茅野青は目を大きく見開いた。彼女は自分の前に差し出された温泉旅館の体験券を見下ろし、それから顔を上げて山田成の整った顔立ちを見つめた。

「玲奈姉ちゃんが誘えって言ったの？もし玲奈姉ちゃんの指示がなかったら、私を誘ったりした？」

長い沈黙の後、茅野青は目を伏せ、小さな声で尋ねた。

山田成は少し戸惑った。そんな質問は考えたこともなかった。

もし玲奈姉ちゃんが彼に約束せず、彼女に指示もしていなかったら、おそらく茅野青を誘うなんて思いもしなかっただろう。

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