第10章 あなたは行かなくていい

中林真由は本社に戻ったが、彼女の首席秘書としての席はすでに他の者に取って代わられていた。

異動で戻ってはきたものの、彼女はもはや秘書課の一介の平秘書に過ぎない。阿部静香はまだ試用期間を終えていないことから、首席秘書のポストが彼女のために空けられているのは明らかだった。

そして中林真由は、またしても隅の席へと追いやられた。

三ヶ月も会社を空けていたせいで、彼女のデスクの上にはかなりの量の書類や雑多な物が積み上がっていた。

中林真由は早朝に出社すると、机の上の書類の山を目にしたが、特に表情を変えることなく片付け始めた。

特に、ぬいぐるみの山を整理している時、彼女は一瞬、心が揺らいだ。

...

ログインして続きを読む