第111章 彼女は彼を恐れる

今野敦史の視線が、中林真由の手を握る江口俊也の手に落ちる。

「江口社長、俺の連れを奪うつもりか? ルール違反だろう」

「奪おうなんて思っていませんよ。中林さんはあなたの秘書だ。誰についていくか決める権利は彼女にある」

江口俊也は中林真由に視線を移した。

「今夜は花火があるんです。特等席を取ってあるから、今から一緒に行きませんか?」

彼の手が、わずかに力を込める。中林真由は赤くなった目元で、感謝の眼差しを彼に向けた。

彼は助け舟を出してくれているのだ。

江口俊也の言葉に甘えてこの場を離れれば、今夜は安全に過ごせるだろう。

中林真由は無意識に江口俊也について行こうとし、腰に回され...

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