第121章 混乱

数分も経たぬうちに、江口俊也がノックをして入ってきた。

江口海は肩をすくめる。

「身柄は引き渡した。俺は疲れたから、お前らは先に帰れ」

「兄貴、悪いな」

江口俊也は短く礼を言い、軽く頭を下げた。

江口海は意味ありげに弟へ視線を送り、片眉を上げてみせると、今度は中林真由に目を向けた。

中林真由が今野敦史に十年間仕えていたという過去を度外視すれば、彼女が江口俊也の元に就くというのは悪くない選択だ。

江口俊也の後ろについて歩き出した中林真由の背に、不意に江口海の声が掛かる。

「中林秘書、俺との約束を忘れるなよ」

彼女の足がわずかに止まる。もちろん、約束を忘れるはずがない。

今野...

ログインして続きを読む