第123章 間違いなく彼だ

「失礼なのは承知していますが、あの方を裏切ってただで済むはずがないことは、中林さんが一番よくご存じでしょう。昨日のことを考えれば……」

 江口俊也は深刻な面持ちで、今野敦史がいる方向へ視線を走らせた。

 今野敦史という男の性格は、彼が一番よく理解している。彼を敵に回すことは、すなわち人生を棒に振るに等しい。

 中林真由は十年間も彼に付き従い、今野家の内情を知りすぎている。そんな中枢にいる人間が離反しようものなら、生皮を剥がされる程度の報復では済まないだろう。

 彼女が悲惨な末路を辿る姿など、見たくはなかった。

 黙り込む中林真由を見て、江口俊也は声を和らげる。

「探りを入れるつも...

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