第136章 走る

その時、会員制ラウンジ『サーヤバー』の入り口では、千葉雄太が今野敦史の腕を強引に引いて中へと進んでいた。

「だから早めに来いって言っただろ? とっておきの見せ場を見逃すぞ」

「お前らのところは毎日が祭り騒ぎだろうが」

 今野敦史は苛立ちを隠そうともせずに吐き捨てた。

 最近の彼は、文字通り頭を抱えていた。中林真由が不在というだけで、社内のありとあらゆる案件が彼の元へ持ち込まれるのだ。

 会社という組織に、これほど雑多な業務が存在したとは、以前は気づきもしなかった。

 財務諸表の決済、給与と賞与の査定、社員旅行の行き先に、忘年会の景品選びまで。

 中林真由が去ってたった数日で、彼...

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