第138章 本当に汚い

中林真由は、ただ茫然と頷いた。

 妊娠初期だからといって、喪失の苦しみが和らぐのかどうか、彼女には分からなかった。ただ、あの瞬間、確かに激痛が走ったことだけは覚えている。

 すがるような目で手術室のライトを見つめる彼女の心は、誰かに無理やり鷲掴みにされたかのように痛んでいた。

 手術室の前に立ち尽くすその背中は、あまりにも頼りなく、孤独だった。

 千葉雄太は、先ほど目にした彼女の瞳と、その肢体を脳裏に蘇らせていた。彼はタバコを取り出すと、今野敦史の肩を軽く叩いた。

「一服してくる」

 そのままトイレへと向かい、紫煙をくゆらせて、ようやく心のざわつきを鎮める。

(魔性の女め!)

...

ログインして続きを読む