第146章 人質

小林洋子の母を階下まで見送った直後、中林真由は再び熱に浮かされたような眩暈に襲われた。

ここ数日まともな休息を取っておらず、昨日は空港で失神騒ぎまで起こしている。今の彼女は、立っているのがやっとというほど消耗しきっていた。

車内で五分だけでも目を閉じて休もうとした矢先、唐突に携帯電話のベルが鳴り響く。

ディスプレイに表示された『石田渉』の文字を見た瞬間、眉間がぴくりと跳ねた。何やら不吉な予感が背筋を走る。

「石田渉、どうしたの? すぐ病院へ向かうわ」

「真由さん……さっき医者が来て、心臓がなくなったって……手術は中止だって言うんだ。姉さん、どういうことだよ? 理由を聞こうとしたら、...

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