第156章 裏

中林真由は柱に背を預けたまま、しばらく呆然としていた。

 彼女も過去の事例を調べてはみたのだ。確かにもう一人の患者の容態が急変した場合、心臓の移植先が変更されるケースは存在する。病院側も緊急度を酌量するだろう。移植しなければ即座に死に至る患者がいるのであれば、なおさらだ。

 しかし、そんな特例は全国でも数えるほどしかない。審査の過程はあまりに過酷で、幾重もの承認手続きが必要なはずだ。

 中林雪乃のように既に通知を受け、手術室に入っていた患者の場合、本来であれば手術は続行されるべきである。手術台から降ろされる理由など、どこにもない。

 そうでなければ、弁護士の平野歩美だって訴訟を引き受...

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