第163章 実情

あの時、今野敦史は深く考えていなかった。中林真由がいつものように些細なことで機嫌を損ね、会社に来ないだけだと思っていたのだ。

 この十年間、彼には何人もの「恋人」と呼べる相手がいたが、中林真由だけは決して仕事を休むことなどなかった。

 彼はただ、少しばかり彼女にお仕置きをしてやろうと思っただけだった。まさか、彼女が流産していたとは思いもしなかった。

 あの日、実家で起きた騒動と、彼女の血の気が引いた真っ白な顔を思い出し、今野敦史は苛立ちを覚えた。

 流産、だったのか。

 煙草を一箱吸い尽くした後、彼はようやく上村賢人に電話をかけた。

「病院に連絡しろ。今日の入り口の防犯カメラの映...

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