第169章 スパイになる

今野会長は言葉を継がなかった。それを見て、中林真由は悟る。彼が今野敦史のやり方に同意したのだと。

彼女は黙って立ち上がり、デザートの空き皿を片づけ始めた。これ以上は、部外者が耳を傾けるべき話ではない。

ふと、以前秘書課で目にした役員関連の資料が脳裏をよぎる。

あの頃からすでに、今野敦史は父親の息がかかった人間を排除するつもりだったのだろう。

実際、取締役会に残っている会長派の人脈は多くない。古くからの重臣と呼べるのは数名だけだ。古参の社員はほとんど引退し、ベテランと呼べる社員も数えるほどしかいない。

聞かずとも、誰が取締役会から追い出されるかは想像がついた。

彼らは役員を解任され...

ログインして続きを読む