第176章 彼女を見逃す?

「他に何か、片付けておくべき用事はあるかい? ああ、そういえば君のお母様、体調が優れないと聞いたよ。入社は数日後でも構わない」

 高橋大和は真摯な面持ちでそう言った。

「いえ、他には特にございません。ただ一点だけ、先にお伝えしておくべきことが」

 中林真由は内心、安堵していた。ようやく仕事が見つかったのだ。

 だが、彼女は声を潜め、念を押すように言った。

「ご存知かと思いますが、私は今野社長から業界的な圧力をかけられています。それでも、本当に私を雇っていただけるのですか?」

「確かに二ヶ月前、彼はそう言っていたね。だが、もう二ヶ月も前の話だ。そうだろう?」

 高橋大和は口元に余...

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