第181章 あの人

高橋大和は、中林真由を市内まで送り届けようとはしなかった。

 中林真由にしてみれば、これも懲罰の一つなのだろうと察しがついた。あの時、あれほど徹底的に彼を追い詰めたのだから、無理もない。

 高橋大和という男は、実に執念深い。とはいえ、腹を割って話したことで、中林真由の胸のつかえは幾分取れていた。

 自分を憎んでいる上司の下で働くなど、地獄以外の何物でもない。

 だが、あの時はそうするしかなかったのだ。今野グループを去る直前だったし、最後の契約をうやむやにしたくはなかった。

 ただ、その分のボーナスが支給されていないことだけが、憂鬱の種だった。

 今は何かと物入りな時期だというのに...

ログインして続きを読む