第185章 元社長

オフィスに足を踏み入れて初めて、中林真由は事態を飲み込んだ。

 佐藤拓海の傍らに、一人の美しい女が座っている。

 秘書然とした堅苦しさは微塵もない。ラフなカジュアルウェアに身を包み、緩くウェーブのかかった髪を無造作に散らしている。その全身からは、どこか気怠げな雰囲気が漂っていた。

 真由は一目でその正体を悟った。——有香だ。

 以前、あの島で今野敦史に連れ去られた女。翌朝、彼のシャツを身に纏っていたあの女だ。

 彼女も真由と同じく、あの夜、交換された女の一人に過ぎない。

 なぜ、この女がここにいるのか?

 真由は深く息を吸い込み、完璧なビジネススマイルを貼り付けた。

「お久し...

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