第27章 愛と愛さない

中林真由はそう言い放つと、足を引きずりながら出て行った。

これ以上、あの二人を視界に入れたくなかった。自分たちの恋愛劇を繰り広げるために他人を巻き込むなんて、本当に胸糞が悪い。

秘書課の他の皆は、彼女が荷物をまとめるのを静かに見つめているだけで、誰も声をかけようとはしなかった。

社長オフィスからは阿部静香の低い泣き声が聞こえてくる。同僚たちは目配せをし、事態が大きくなったと感じていた。

阿部静香が中林真由の代わりになれないことは明らかだった。少なくとも、仕事の上では。

しかし、中林真由が辞めてしまえば、とばっちりを受けるのは秘書課だ。

山崎奈々未が前に出て荷造りを手伝いながら、小...

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