第31章 欲擒故縦

十年もの付き合いだ。今野敦史はこの女をどうやって屈服させるか、知り尽くしている。

しかし、今日はどうも様子が違った。彼がどれだけ煽情的に誘っても、中林真由の体はずっと強張ったままで、欲望の欠片も見せない。

今野敦史は彼女の首筋や鎖骨に執拗に噛みついた。その鎖骨にある歯形を見て、彼は一瞬動きを止め、自分が捨てたネックレスのことを思い出した。

あの瞬間、この女の目に失望の色が浮かんだような気がしたのは、気のせいだっただろうか?

「ネックレスが好きなら、また買ってやる」

中林真由が「いりません」と言いかけると、今野敦史が低い声で言った。「彼女の前で見せびらかすな」

その一言で、中林真由...

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