第54章 新しい愛人

あの日以来、中林真由は今野敦史と二度と会うことはなかった。

彼女は特に何も感じず、相変わらず様々な会社の人事担当者と面会を続けていた。すぐにでも次の仕事を見つける必要があったからだ。

高木文也の一件を経て、彼女はもうこの土地にはいられないとはっきりと悟っていた。

彼女は生粋の海市育ちで、大学も海市だった。いわば、一度も海市を離れたことがない。

しかし、それが外の世界を見てみたいという彼女の気持ちを妨げることはなかった。

以前は今野敦史についていき、一生今野グループで働くことになるのかもしれないと考えたこともあったが、世の中は何が起こるか分からない。

だから中林真由は今、海市以外の...

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