第61章 ハニートラップ

中林真由は車の中で、逡巡の末、今野敦史の番号をダイヤルした。

今野敦史はすでにシャワーを浴び終えていた。彼は中林真由が新しく買ってきたボディソープを仕方なく使ってみたものの、どうにもしっくりこない。元の香りとは全く違い、気に入らなかった。

誰もいないリビングを見つめ、今野敦史の顔は恐ろしいほどに陰鬱だった。

電話が鳴ったが、今野敦史は考えるまでもなく、即座に切った。

法務部からはもう彼女に連絡がいっているはずだ。このタイミングで問い詰めてくるとは、なかなか面白い。

玄関のチャイムが鳴り、今野敦史が苛々しながらドアを開けると、そこには不安げな顔をした警備員が立っていた。

「今野さん...

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