第64章 あなたが賠償する必要はない

退勤時間、中林真由は一足先に駐車場に着いていた。

今野敦史が書類を処理し終えて階下に降りてきたとき、その後ろにはしくしくと泣いている竹田南がついてきていた。

「今野社長、どうして私を異動させるんですか? 何かご不満な点でもありましたか?」

「私、直せますから。本当に何でも改めますから、捨てないでください。あなたのそばにいろと言ってくださったじゃないですか」

彼女の声はか細く、聞く者の心をくすぐる。

彼女は阿部静香について真剣に研究し、今野グループの同僚から阿部静香の立ち居振る舞いについて聞き込みまでしていた。

阿部静香が泣き虫だと知っていたので、彼女もまたこのとき目を赤...

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