第72章 合格した

中林真由はデパートの入り口まで来ると、素早く今野敦史のスーツを脱ぎ捨て、地面に投げつけて二、三度踏みつけた。

黒いスーツについた足跡を見て、彼女は一瞬呆然としたが、すぐにスーツを拾い上げ、埃を綺麗に払い落としてからデパートに入った。

今野敦史のあの犬のような気性を考えれば、もし自分の服を踏んだと知られたら、弁償させられるかもしれない。

中林真由はブランド専用カウンターへ直行し、一番高価な服を一着選んだ。

販売員がさらに何着か紹介しようとしたが、中林真由は「これでいいです。着て帰ります」と即座に断った。

販売員は彼女が全身ずぶ濡れなのを見て、気を利かせてタオルを持ってきてくれた。

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