第86章 十年

高橋社長はわずかに眉を跳ね上げた。まさか中林真由が、本気でそんなことを考えているとは思わなかったからだ。

直後、中林真由は携帯電話を取り出し、本当に通話ボタンを押した。

「今野社長、高橋社長が契約の件で、竹田秘書に直接お越しいただきたいと仰っています。ご指示を仰ぎたいのですが、竹田秘書をこちらへ向かわせてもよろしいでしょうか?」

「中林真由!」

高橋社長は慌てて彼女の携帯電話を奪い取ろうと詰め寄る。

しかし、画面には番号など入力されていなかった。彼は歯噛みしながら睨みつけた。

「俺を担いだのか?」

「高橋社長。奥様もお子様もいらっしゃるのですから、ご自身の会社を守ることだけをお...

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