第95章 掟

江口俊也は喋るのに夢中で、背後に北村一馬が立っていることに気づかなかった。会話はすべて筒抜けだった。

北村一馬は先ほどから妙だと思っていた。初日である今日のオークションで、江口俊也が今野敦史の機嫌を損ねてまで無理に競り合う必要などないはずだ。だが、今の会話で合点がいった。江口俊也は、中林真由に目をつけていたのだ。

最近、いくつかの会社が中林真由に接触を図っているという噂もある。これは今野敦史に忠告しておくべきだろう。

今野敦史がトイレに立った隙を見計らい、北村一馬は慌ててその後を追った。

「江口俊也と何か因縁でもあるのか?」

「あ?」

今野敦史が横目で彼を睨む。

北村一馬は唇を...

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