第99章 騙されて来た

今野敦史が沈黙を保っているのを見て、中林真由もそれ以上言葉を重ねるつもりはなかった。

彼女にできるのはここまでだ。一介の秘書がトップの意思決定に口出しなどできるはずもない。ましてや、間もなく退職する身であれば尚更だ。

いずれ江口家と全面戦争になったとしても、その頃には遠く離れた土地で新しい仕事に就いているだろう。

それに、今は体調が悪すぎて、そんな先のことを憂う余裕などない。

今野敦史が江口花を解雇しようがしまいが、どうせ今後のトラブルは彼女の知ったことではないのだ。

今、真由にできる唯一のことは、江口俊也に釘を刺すことくらいか。彼と花の仲は良い。兄として、妹があまり恋愛にのめり込...

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