第3章
そして現在。クロスレストランから逃げ出した私は、地下鉄でB市に戻り、そのまま二つ目のバイト――オフィスビルの深夜清掃シフトへと駆け込んだ。
時刻は午前一時。油と消毒液の匂いをまとわりつかせ、アパート近くの二十四時間営業のコンビニに足を踏み入れると、蛍光灯の光が疲弊した目に突き刺さるようだった。
ポケットの中には、二つの仕事を合わせた今夜の稼ぎ――五十ドルを握りしめている。明日の家賃には、まだ三百ドル足りない。
疲れ果てて通路を彷徨い、一番安いカップ麺を手に取る。三ドル――これが私の夕食代だ。
振り返った瞬間、雑誌棚に置かれた一枚の写真に、慣れ親しんだ痛みが胸を締め付けた。
長谷川冬月の顔だった。
当然だ。また表紙。またしても、私が彼を押し上げた高みが、今や手の届かない遥か彼方にあることを思い知らされる。
『ヴォーグ』の表紙で、彼は黒いスーツを纏い、その瞳は海のように深く、顎のラインは完璧に彫り刻まれたようだった。
「『ヴォーグ』にまで載るようになったんだ」と、私は苦々しく呟いた。
手からカップ麺が滑り落ち、床に叩きつけられて粉末スープの袋が散らばった。
店員がこちらを一瞥する。
「そのモデルさん、今すごく人気ですよね。今年のトップモデルだって聞きましたよ。ユニタロの広告塔で――何百万ドルもの価値があるとか」
何百万ドル。
三年前、私は彼に月五千ドルをお小遣いとして渡していたのに。
震える手で、その雑誌を手に取った。表紙の長谷川冬月は、以前の撮影の時よりもさらに目を眩ませるほどの自信に輝いていた。
「本当に、私が言った通りのあなたになったのね」
私は苦笑いを浮かべて言った。
「私が『なれる』って言った、そのすべてに」
――でも私は、自分がこうなるだろうと恐れていたすべてになってしまった。
「私の目に狂いはなかった」
光沢のある表紙に涙がぽたぽたと落ちる中、私は呟いた。
「ただ、その代償はあまりにも高すぎた」
会計を済ませ、私はコンビニを出た。明日、家賃が払えなくなるかもしれないのに、その雑誌を握りしめていた。
でも、どうしようもなかった。長谷川冬月が『ヴォーグ』の表紙で燃えるように輝いているのを見た瞬間、すべての理性が崩れ去ったのだ。十九ドル――今夜の稼ぎの四十パーセント近くを占めるが、この雑誌を手に入れずにはいられなかった。
B市の夜は不気味なほど静かで、時折遠くで車の走る音が聞こえるだけだった。雑誌をぱらぱらとめくる――どのページも長谷川冬月の写真で埋め尽くされている。ファッションウィークのレッドカーペットでのショット、ブランドキャンペーンの舞台裏、ファッション業界の大物たちとのツーショット。
心臓がずたずたに切り刻まれるようだった。
『長谷川冬月の成功は、三年前のある謎の女性の助けなしにはあり得なかった。この女性の正体は不明のままだが、長谷川冬月はインタビューで繰り返し、彼女がいなければ今の自分はいないと語っている……』
その謎の女性とは、私のことだ。
「彼を頂点に押し上げたのは私なのに」
込み上げる涙を堪えながら、私は言った。
「その一方で、私は奈落の底に落ちた」
記事には、彼が「大切な人を探している」とも書かれていた。それが私のことだとわかっている。でも、今日の昼間、S市で彼が言い放った言葉は、ナイフのように私を切り裂いた。
「ただの、退屈して逃げ出した見栄っ張りのパトロン女だった」
「彼の成功を喜ぶべきなのに」
雑誌に写る彼の顔を撫でながら、私は言った。
「どうして、こんなに胸が痛むんだろう?」
彼を愛していたからだ。
今は彼に憎まれていても、もてあそばれたただの女だと思われていても、私はまだ、彼を愛していた。
魂が砕けるほどの激しさで、彼を愛していた。
みすぼらしいアパートに戻ると、私は長谷川冬月の雑誌の表紙を、ひび割れた壁に丁寧にテープで貼り付けた。
鏡に映る私は、髪は乱れ、目は赤く腫れ上がり、頬はこけ、見るも無惨な姿だった。今夜負った怪我で手にはまだ包帯が巻かれ、爪の間には汚れがこびりついている。
一方、壁の上の長谷川冬月は、神のように輝き、完璧そのものだった。
私たちの間の距離は、三年前よりもさらに広がってしまっていた。
あの頃、私は『パルス』の威厳ある編集長で、彼は私の救いを必要とする貧しい少年だった。今や彼は世界的に有名なスーパーモデルで、私は家賃さえ払えない配達員だ。
「自分の手で彼を突き放した」
私は痛みに目を閉じながら言った。
「その過程で、自分自身を破滅させた」
もし時間を巻き戻せたら、私は同じ選択をするだろうか?
あの頃は、去ることが彼を守ることだと思っていた。でも今ならわかる。私はただの臆病者だったのだ。
携帯電話を開き、必死で長谷川冬月に関するニュースを片っ端から検索した。
読めば読むほど、胸が痛んだ。
様々なセレブとの噂がエンタメ欄を賑わせていた――ミラノファッションウィークでのイタリアのプリンセスとの写真、オートクチュールウィークでのフランス人女優との親密な会話、ファッションショーのチャリティーイベントで金融界の令嬢と腕を組む姿。
どの写真も、刃物のように私の心を切り裂いていく。
『長谷川冬月、ファッションウィークにソーシャライトの小川紗季と出席。二人は親密な様子で、新たなロマンスの噂が浮上……』
写真に写る、黒髪で青い瞳の女性を睨みつけた。彼女はシャネルのオートクチュールのドレスを身にまとい、長谷川冬月の腕を取りながら晴れやかに微笑んでいる。
「彼女に、彼の隣に立つ権利がどこにあるっていうの?」
嫉妬が毒のように私の心を蝕む。
「彼にふさわしいとでも言うの?」
その場所は、私のものだったはずなのに。
午前三時、私はベッドに座り、長谷川冬月の雑誌の写真を握りしめながら、声を上げて泣いていた。
すべての見せかけは崩れ去った。もう自分を騙すことはできない。
「会いたい」
私は写真に向かって泣き叫んだ。
「あなたに会いたいと思わなかったことなんて、一度もなかった」
三年間、彼の一挙手一投足を追いかけてきた。すべてのニュース記事、すべての写真、すべてのインタビュー――一つとして見逃したことはなかった。
ただ心配しているだけだと自分に言い聞かせていたけど、本当は執着だった。
「あなたから離れることが、あなたを守ることだと思ってた」
涙が写真の上に落ちる。
「結局、二人ともを苦しめただけだった」
『パルス』が倒産した時、噂が飛び交った。人々は長谷川冬月が私の愛人であり、彼が私のキャリアを台無しにすると言った。
でも、事態はそれよりずっと悪かった――私はただ破産しただけでなく、業界の「毒」になっていたのだ。かつての味方は一夜にして私に背を向けた。広告主は私の名前と関わりのある人間をすべてブラックリストに入れた。業界関係者は疫病神のように私を避けた。
私はファッション界の疫病神そのものとなり、私と一緒にいれば、長谷川冬月のチャンスが始まる前に潰えてしまうことを知っていた。怖くなったのだ――私のせいで彼がファッション業界全体から締め出されるのではないかと、恐ろしくてたまらなかった。
だから私は、「犠牲」になることを選んだ。
今となっては、その犠牲がいかに馬鹿げたものだったかがわかる。
ひび割れた壁に貼られた彼の完璧な姿を見つめながら、私はもう一度自問した。もし運命がもう一度チャンスをくれるなら、違う選択をする勇気があるだろうか?
しかし、今さら後悔しても遅すぎる。
私たちは住む世界が違う。彼は天に輝く星で、私は地に落ちた塵なのだから。







