第8章

スーツケースはもう荷造りを終え、ベッドのそばに置いてある。明日の朝、私は完全に姿を消す。長谷川冬月が絶対に見つけられない場所へ。

しかし今は、パソコンの前に座り、彼の動画を最後にもう一度見ていた。画面の中の長谷川冬月は、黒いスーツを身にまとい、ミラノの舞台を歩いている。その一歩一歩が、まるで王子様のように優雅だった。涙が止めどなく頬を伝った。

『成功の一歩一歩を、誰かと分分かち合えたらと願うんです』

動画の中のインタビューで、彼の声が聞こえる。

私は顔を覆い、肩を激しく震わせた。

「私もあなたのそばにいたい。でも、私には資格がない……もう、資格なんてない!」

パソコンの...

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