過去を垣間見る

多くの人は、幼い頃の出来事をあまり覚えていないものだ。子供時代の記憶といえば、誕生日のスナップ写真の断片や、擦りむいた膝、母親の髪の匂い、あるいは玄関で鍵が鳴る音といった、ぼんやりとしたものばかり。だが、俺は違う。

十歳の時、午後のトレーニング場から足を引きずって帰ったことを覚えている。脛には血がべっとりと付いていて、膝の皿が割れたような深い傷を負っていた。年上の連中に足の速さを見せつけようとして、緩んだハードルにつまずいたのだ。脚の皮膚は、まるで安っぽい壁紙のようにめくれ上がっていた。本来ならすぐに保健室に行くべきだったろう。だが俺は、足を引きずり、腹を空かせたまま家を目指した。お袋が帰っ...

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