取引はあるのか、しないのか?

フィンのこの感情は、明らかにただの気まぐれなんかじゃない。「親友だから」という類のものでもない。違う。もっと深いものだ。

彼女の名前を口にする時の声のかすれ具合。落ち着きなく動く手。そのパニックの端々には、失恋と見紛うほどの痛みが滲んでいる。

おそらく、奴自身はまだ気づいていないのだろう。デライラに執着するあまり、ずっと隣にあった存在が見えていない。だが、俺には見える。見えてしまうからこそ、クソほど腹が立つ。

俺は頬の内側を強く噛みしめた。口の中に鉄の味が広がる。

戦場で身につけた癖だ――騒ぎ立てる代わりに、静かな痛みを。それが思考を安定させ、鋭敏にし、抑制してくれる。だが、目の前で繰...

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