彼らはソウルメイトです
~~スローン~~
信じられない。
飛行機で三時間。あのみじめなアッシュビル空港で一時間の足止め。その挙句が、フィンがデライラ・クレストフィールドと舌を絡ませているところに出くわすだなんて?
フィンは厚かましくも、罪悪感に満ちた顔をしている。
「スローン、こんなところを見せちゃって本当に申し訳ない……」
「申し訳ない?」私は彼の言葉を遮った。怒りで声が震える。「少しは自尊心ってものがないの、フィン。その女は二日後に結婚するのよ。それなのにイチャついてるわけ?」
「彼があなたとイチャつくほうがよかった?」デライラが尋ねる。
「やめろよ」フィンが彼女に鋭く言う。
「どうして? 誰にも相手にされないから惨めなんでしょ、彼女。だから人生をかけてあなたを支配しようとしてるのよ。あなただって、もう好きにしていい年齢なんだから」
「いい年齢ですって? 二人とも子供みたいじゃない」私は言い放つ。「どうするつもりなの、フィン? 婚約者の目を盗んでコソコソ付き合う気? 可哀想なハンターが酔い潰れてる間に、ハネムーン・スイートでやるつもり?」
デライラはまるでこれが悪趣味な冗談かのように笑う。婚約指輪が光を反射して煌めく。明らかに高価な代物だ。それを見て、私の血はさらに煮えくり返る。
「デライラはハンターと別れるんだ」フィンは自信ありげに言う。
だが、デライラは眉をひそめた。「別れないわよ。どこからそんな発想が出てきたの?」
「キスしたじゃないか」
「だから? 結婚をやめる理由にはならないわ」
「そういうことだろう、ライラ」
「本気で言ってるの? 結婚式は挙げるわよ、フィン」
フィンの顔から希望がみるみるうちに失われ、傷ついた表情へと変わっていくのを私は見ていた。
彼は死ぬほど傷ついている。そして私は腹が立つ。いつになったら学習するの?
「その人を操る嘘つきな性根ごと、ここから出て行って」私は彼女に吐き捨てた。
デライラは微笑む。「嫌だと言ったら?」
「楽しんでるんでしょ? 彼を苦しめるのが。彼があなたに惚れ込みすぎてて、あなたの病的な支配ゲームに気づかないのをいいことに、目の前で思わせぶりな態度をとって」
デライラは呆れたように目を回す。「どうするつもり? お説教で私を殺す気? まったく。フィンでさえ、あなたのお説教にはうんざりしてるのよ、スローン」
「その汚い口を閉じなさい」私は唸り声を上げ、彼女に詰め寄る。「とっとと失せろ」
「ねえ、私を呼んだのは彼なのよ。もしあなたが私くらいイイ女で、ベッドでのテクニックもあれば、彼も振り向いてくれたかもね」
私は彼女に飛びかかった。
だが、ノックスに捕まった。
彼がここにいたことなど完全に忘れていた。鋼鉄のたがのような腕が私の腰に巻き付き、私を胸元に引き寄せ、標的から引き剥がす。
「離して、ノックス」私は言う。
「それはできないな、スローン」
私は彼の腕の中で暴れた。怒りが力を貸してくれる。「今すぐあんたに暴力を振るってやろうかしら」
「よせよ、子猫ちゃん(キトゥン)。二人にしてやれ」
子猫ちゃん? 「なんで私がそんなことしなきゃいけないの?」
「二人の問題は二人で決着をつける必要があるからだ。あんたがいても事態を悪化させるだけだ。二人きりにしてやろう」
反論したかった。叫びたかった。だが、彼の言う通りだ。そして、彼が正しいという事実が癪に障る。
だから私は、大人しく彼に引きずられていった。
背後からフィンの声が聞こえる。デライラに行かないでくれと懇願する、弱々しく壊れそうな声。吐き気がする。
リビングに着く頃には、体の内側から火をつけられたような気分だった。私は怒り狂いながらソファに倒れ込んだ。
ノックスが隣に座り、手足を伸ばしてくつろぐ。
「いつもそんなに劇的なのか?」彼は言った。「言っておくが、見ていて痛々しいほどバレバレだったぞ」
「何がバレバレだって?」
「あんたがフィンに惚れてるってことだよ」
心臓が跳ねた。どうしてわかったの? 「彼のことなんて愛してないわ」
「いや、愛してるね」ノックスは気だるげに言う。「フィンだって気づいてる」
「何言ってるの? 彼が何か言った?」
ノックスは肩をすくめ、その暗くすべてを見通すような瞳で私を観察する。「言う必要があるか? 俺たちは今日会ったばかりだが、それでも勘づいたぞ。あいつはあんたを何年も知ってるんだ。計算してみろよ」
私は立ち上がり、部屋の中を歩き回り始めた。この状況を処理しようとして手が震える。部屋が急に狭く感じられ、空気が薄い。「あなたの思い込みは間違いよ。私はフィンを愛してなんかない」
「はいはい」
「違うのよ、ノックス」
「あんたがそれで安眠できるなら、そういうことにしておきな、子猫ちゃん」
「その呼び方やめて」
「は? 子猫ちゃん?」
何かを――罵声か、あるいは花瓶でも――投げつけてやるか迷う暇もなく、デライラが階段を駆け下り、玄関へ向かった。フィンはまるで情けない下僕のように、彼女の後を追いかけていく。二人が外へ飛び出すと、ドアがバタンと閉まり、その音が家中に響き渡った。
私は息つく暇もなく、二人を追おうとした。だが、ノックスが――この厄介な男が――またしても私の腰を掴んで引き止めた。
「私に何の恨みがあるわけ?」私は彼の方へ体を捻り、鋭く言い放つ。
「親の家で馬鹿な真似はさせたくないんでね」
「私は友達が心配なだけよ。あなたは自分の友達のことなんてどうでもいいんでしょうね。じゃなきゃ、今すぐハンターに電話して、婚約者が浮気してるって教えてあげてるはずだわ」
ノックスは鼻で笑った。「ハンターが知らないとでも? 彼女は何ヶ月も前からあいつを裏切ってるんだよ」
私の口がぽかんと開いた。「本気で言ってるの?」
彼女はどうやってるの? どうして男たちをこんなにも意のままに操れるの?
ノックスは私を窓の方へと押しやり、腰をしっかりと掴んだまま離さない。彼の体のあらゆる部分が私に押し付けられているのを感じる。熱。筋肉。そして彼の香り。それらすべてが私を包み込み、まともな思考を奪っていく。奇妙な感覚だ。あまりにも奇妙で、なんと呼べばいいのかさえわからない。ただ言えるのは、ノックスの存在を痛いほど意識させられているということ。まるで彼が至る所に存在しているかのようだ。それとも、最後に男性に触れられてから随分経つせいで、こんな反応をしてしまっているだけなのだろうか。
私はガラス越しの光景に意識を集中させようとした。プールサイドでフィンとデライラが言い争っている。フィンの拳は固く握りしめられ、苛立ちで顎が強張っていた。対照的に、デライラは落ち着き払っている。声は聞こえないが、聞く必要なんてない。この光景はもう嫌というほど見てきた――フィンが懇願し、デライラが気を持たせる。胃の底に苦いしこりが生まれた。
「あいつらを覗き見したいならな、子猫ちゃん」ノックスの唇が耳元に近づく。「ここからなら特等席だ。これなら邪魔も入らない。好きなら噂話に花を咲かせてもいいぜ。さあ教えてくれよスローン、二人は今、何について揉めてると思う?」
彼の吐息がいかにくすぐったいか、それが首筋に鳥肌を立たせていることに気づかないふりをした。
「どうせ、彼女が完全に別れを切り出しているとかでしょ」と私は言う。
「はずれ。彼女は絶対に彼から離れないし、彼も彼女を手放さない。二人はソウルメイトなんだよ。有害な(トキシックな)ソウルメイトだけどな。仕方ないさ。このサイクルは終わらない」
彼の口調にはどこか諦めのようなものが滲んでいた。まるで、この茶番劇を数え切れないほど見てきたかのように。彼とは違い、私はまだ親友を見捨てるつもりはない。
「速報よ、キューピッドさん」私は言った。「彼女は他の誰かと結婚するの。あなたのソウルメイト説は事実とは程遠いわ」
「その結婚式、本当に行われると思うか?」
「当然でしょ」
「ありえないな」
私は鼻を鳴らし、彼の方へ向き直った。「どういう意味? 邪魔でもするつもり?」
「俺がする必要はない。あいつらはそういう生き物なんだよ。別れてはヨリを戻す。それが二人の有害な小さなサイクルさ」
「あなたって最低ね、ノックス。友達の婚約者が彼を傷つけるのを本気で望んでるわけ?」
「デライラがフィンの元に戻ることほど嬉しいことはないね」彼の口調はあまりに軽く、無関心だった。その得意げな顔を張り飛ばしてやりたい。「ハンターはいい奴だ。こんな目に遭う資格はない」
「じゃあ弟は? 彼にはこんな目に遭う資格があるっていうの? あの女にずっと苦しめられるのがお似合いだって?」
「その質問に対する俺の答えは、お前も分かってるはずだろ、スローン」
「少しは心配してるふりくらいしなさいよ」
「心配してないとでも?」と彼は問う。
「してるの? もしそうなら、今すぐデライラをこの家から追い出してるはずよ」
「なんで俺がそんなことを?」
「だって、彼はあなたの弟でしょ」
「明らかに恋をしている弟だろ」
信じられない。「あれを愛と呼ぶの? 彼女は彼を利用してるだけ。あれのどこが愛なのよ? もしかして、一度も恋をしたことがないから、愛がどんなものか分からないんじゃない? 心の底から断言できるけど、あんなものは愛じゃないわ」
「じゃあ、どんなものが愛なんだ、スローン? お前がフィンに対して抱いている感情と同じか? だとしたら、それも随分と惨めに見えるけどな」
