第4章:怒りともろさ

デイモン

デイモン・ヘイルは、恐怖というものを滅多に感じない男だった。危険を前にしても揺るぎない眼差しでそれを見据え、混沌の中を確固たる意志で歩む。だが、なめらかな黒い車のハンドルを握り、薄暗い通りをセラフィナの元へと飛ばしている今、冷たく鋭い恐怖が、有刺鉄線のように胸の中でとぐろを巻いていた。

彼女の声がまだ脳裏に焼き付いていた――途切れ途切れで、震え、そしてあまりにもか細い声が。

「デイモン……助けてほしいの」

短い運転の間、その言葉を頭の中で百回は繰り返していただろう。繰り返すたびに、彼の内なる何かが危険なほどに燃え上がった。彼女の元に着いたとき、何を目にするのかは分から...

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