第12章

池田琴子は古崎正弘を罵りながら、水原明美に説得工作を行っていた。

親友のぐちぐちとした話を聞きながら、水原明美は思わず笑みを浮かべた。彼女は、池田琴子が自分を心配してこうしているのだと知っていた。

「一人の生活も結構いいのよ。恋愛なんて考えてないわ」

「気遣いありがとう。そろそろ帰るわ。また今度会いましょう」

時は流れ、夜の帳が下りていた。

古崎家の大邸宅、二階の書斎。

古崎正弘はアンティークのソファに座り、その端正な顔は冬の厳しさを思わせるほど冷たかった。

「リンリン」と携帯の着信音が鳴り、渡辺健司からの電話だった。

「病院から連絡があったぞ。水原明美の容態は安定していて、...

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