第28章

説明を終えると、古崎正弘はそのまま立ち去った。さすが傲慢な社長という風情だ。

水原明美もそれ以上気にしなかった。ただ仕事をこなすために来たのだから、仕事が終われば早く帰れる。

会議室に入ると、水原明美は川村直哉からケースの詳細を聞き始めた。

相手の説明によると、「恒和財務会社」という金融企業がKMグループに多額の負債を抱えており、その額は10億円近くに達していた。

KMグループの法務チームはすでに司法手続きを通じて相手に債務返済を求め、強制執行を行っていた。しかし、財産清算を進める段階で「恒和財務会社」の執行可能な財産が見つからなかった。

つまり、この10億円の債権は不良債権になり...

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