第32章

KMグループの案件を引き受けるということは、今後も水原明美が古崎正弘と関わることを意味する。

真実を知った、彼に対する恨みが薄れ、むしろ感謝の気持ちさえ抱くようになった。しかし、これは危険なことだった。彼女が彼を憎まなくなれば、再び彼に惹かれてしまう可能性があるのだから。

自分と古崎正弘が異なる世界の人間であり、無理に一緒になっても互いに不幸になるだけだと理解していた。だからこそ、KMグループの案件を手放す決断をしたのだ。

田中俊太は理解を示さず、こう説得した。「古崎社長はあなたを高く評価していますし、あなたを指名してきたんですよ……KMグループに残れば、将来のキャリアにも良いはずです...