第50章 夫婦間のゲーム

古崎正弘はタバコを消すと、大きな手で易々と水原明美の手首を掴み、ほとんど引きずるようにして床から天井まである窓の前まで連れてきた。

窓の外には下川で最も繁華な高級オフィス街が広がっていた。遠くには下川のランドマークが見え、まぶしいほど輝くガラスの壁面が高くそびえ立っている。そのランドマークを取り囲むように、最高峰の企業群のビルが立ち並んでいた。

これらの高層ビルの間を走る道路や歩道では、車はまるでカブトムシほどの大きさに見え、歩行者に至ってはアリのようだった。

灼熱の太陽の下、清掃作業員が掃除をし、バス停には人々が集まり、パンを齧りながら電話をする人もいる。

見下ろす視点から社会の一...

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