第103章

話の途中で遮られ、黒川颯はちらりと瞼を上げた。

「お前の顔がでかいかどうかを議論してた」

ぷっ――。

伊井瀬奈は思わず噴き出してしまった。

黒川織江はもともと伊井瀬奈を仮想敵と見なしていた。周りの誰もが伊井瀬奈を綺麗だと褒め、お爺さんや執事の森下さんまでもがあの女の味方をする。内心、腹が煮えくり返りそうだった。

彼女は伊井瀬奈を見ながら、無意識に自分の顔を触っていた。私の顔、本当にそんなに大きいの? 肝心なことに、伊井瀬奈は典型的な小頭小顔の美女で、あの気に食わない女にそれなりの美貌があることは認めざるを得なかった。

「お兄ちゃん! 伊井瀬奈の方が顔大きいじゃない、なん...

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