第107章

陸上睦月はぴたりと足を止めた。

「何を言っている?」

黒川織江は顎をしゃくり、かなり得意げに言った。

「彼女は兄さんの初恋の人なの。兄さんと伊井瀬奈はいずれ離婚するわ。あんな何の取り柄もない女が、どうして私の義姉さんになる資格があるっていうの。私の義姉さんは汐里みたいな美人じゃなきゃ」

陸上睦月は心底驚愕した。あの女が艶めかしく黒川颯に会いに来るのを見て、心中では早くから疑念を抱いていた。ただ、黒川家がここまで節操のない人間だとは思ってもみなかった。これでは伊井瀬奈の立場はどうなる?

あの女は相手が既婚者だと知っていて関係を持っている。肝心なのは、黒川グループの兄妹が彼女を受け入れ...

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