第111章

黒川颯はベッドの上で何度も寝返りを打った末、一つの事実を確信した。眠れないのだ。

彼は以前、家政婦からもらった睡眠薬を探し出し、一錠飲むと書斎へ移動して一夜を明かした。

翌日、彼を起こしたのは一本の電話だった。

「黒川社長、大変なことになりました」

電話の向こうで、神谷竜也が戦々恐々とした声で言った。

「何があった、話せ」

「昨夜、スワン株式会社から連絡がありました。我が社の公式サイトで今季の主力商品として打ち出しているネックレスが、スワン株式会社のリリが発表予定の作品とほとんど瓜二つだというのです。幸い、スワン側はまだ完成品を出していませんが、向こうには手描きの原画があります。...

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