第122章

「違うとでも?」

彼女は今でも覚えている。ある時、彼に激しく求められ、翌日はベッドから起き上がれなかった。その夜、残業していた彼から、最新のエルメスのバッグが届けられた。添えられたカードには『お疲れ様。これは埋め合わせだ』と書かれていた。

これが料金の支払いじゃなくて何だというのだろう?

普通の夫婦なら、こんな風にいちいち貸し借りを作るだろうか。こんなことで清算が必要で、埋め合わせまでいるなんて。

黒川颯は、今の彼女が少し話の通じない状態にあると感じた。プレゼントを贈ってこれでは、金を払って面倒事を買ったようなものではないか。

ありがたみを知らない女だ。

「いらないなら捨てろ!」...

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