第144章

電話を切ると、羽鳥汐里は満足げに、箸で弁当箱のおかずをつまみ始めた。

黒川颯の表情はどこか憂鬱だった。電話口から伊井瀬奈の怒気が伝わってきて、この電話をかけたことを少し後悔していた。彼は伊井瀬奈に対して罪悪感を抱いており、たかが数個の大福のために彼女の機嫌を損ねる必要はなかったのだ。

羽鳥汐里が幸せそうに食事するのを見て、彼は黙り込み、話す気になれなかった。

羽鳥汐里はお腹を満たして上機嫌になると、箸を放り出し、両手で黒川颯の腕に絡みついた。

「颯兄さん、私のことが心配なの?それとも、あなたの息子のことが心配?」

羽鳥汐里は黒川颯の手を取り、自身の下腹部に置こうとした。

黒川颯は...

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