第16章

神谷竜也は野球バットを手に、その男の顔を軽く叩き、脅しをかけた。

「無駄口を叩くな。要点だけ話せ!」

男は数度震えてから口を開いた。

「お洒落な格好をしたお嬢様でした。俺たちが見たのは横顔だけで、すごく痩せてて、腰まであるウェーブのかかったロングヘアで、真珠のピアスをつけてました。その女が俺たち三人に二百万の現金を渡して、宝華通りで綺麗な女を待って、そいつを汚したらさらに二百万をくれると。俺が知ってるのはこれだけです。どうかもう殴らないでください」

もう一人のチンピラは首をすくめ、必死に頷いてその通りだと示した。

黒川颯の心に、氷のような痺れが走った。彼女が無事でよかった。伊井瀬奈...

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