第84章

「義姉さん、あなたが言っていたあの家、少し前にネットで売りに出されてたんだけど、黒川颯に頼まれて俺が買ったんだ。買い手が自分だと知られたくなかったみたいでさ。俺とあいつが仲良いのはみんな知ってるだろ? 色々考えた末に、俺の妹の名義にしたんだ」

「でも、それもあなたにバレちゃったしな。しばらくして羽鳥汐里がこの家のことを気にしなくなったら、名義変更の手続きをしよう。この家は、あいつがあなたのために買ったものなんだ」

武藤拓真は頭を掻きながら、洗いざらい白状した。

伊井瀬奈は顎が外れるほど驚いた。「どうして彼が落札したの?」

彼が羽鳥汐里からあの家を落札してどうするのだろう? 彼名義の不...

ログインして続きを読む