第89章

黒川の爺様は眉を上げた。

「どうした、颯の奴にまたいじめられたか?」

伊井瀬奈はくすりと笑った。お爺様はいつも、黒川颯が自分をいじめるのではないかと心配している。

「お爺様、そんなことありません」

「そうだろうな。近頃のお前さんは調子が良さそうだ。少しふっくらしたんじゃないか?あいつがお前さんをいじめるようなことがあったら、爺様のところに来なさい。わしが懲らしめてやるからな!」

伊井瀬奈は、自分は本当に良い後ろ盾を見つけたものだと思った。お爺様は実の孫の肩を持たず、最初から最後まで孫嫁である自分を贔屓してくれるのだから。

しかし、お爺様にも太ったと見抜かれるとは、最近の自分は本当...

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