第065章

「水原さん、お急ぎで?」

「いえ、それほどでも」水原玲は彼の意図を掴みかねていた。

「お急ぎでないなら、まずはお食事でもしながらお話ししませんか?」伊藤剛は再び微笑んだ。

水原玲は申し訳なさそうに言った。「すみません、伊藤社長。私、こういった接待の席にはあまり慣れていなくて」

「構いませんよ」伊藤剛はメニューを彼女に渡した。「水原さんの好き嫌いが分からないので、私が勝手に決めてしまうのもどうかと思いまして。水原さん、どうぞお選びください」

「好き嫌いはありませんので、伊藤社長がお決めください」

「では、遠慮なく」伊藤剛はメニューを閉じ、店員に告げた。「お任せで頼む」

「かしこま...

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