第079章

石川秀樹は何も言わず、それを黙認した形だ。

しかし、水原玲はそれを望まず、淡々と言った。「ありがとうございます。でも、結構です」

斎藤恭介もそれ以上は何も言えず、荷物を持って中へ入っていった。

水原玲が立ち去ろうとしたその時、石川秀樹の低く沈んだ声が聞こえた。斎藤恭介に向けられたものだ。「食欲がない。食べられないから、持って帰ってくれ」

水原玲は足を止め、思わず眉をひそめた。この男、銃で撃たれて怪我をしているのに、休みもせず、食事もとらないなんて。体は鉄でできているとでもいうのだろうか?

まあいい。彼が食べないなら食べないで、自分に何の関係があるというのか。

しかし、このまま彼が...

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