第156章

山本美咲はちょうどその角度から入口が見え、高橋隆一が冷たい眼差しでそこに立っているのが見えた。彼女は横目で山本健一を見て、極度に居心地の悪さを感じた。

「お父さん、もういいから……」

山本健一はまだ山本美咲が高橋家の長男を身籠ったという喜びに浸っていて、高橋隆一が来ていることにまったく気づいていなかった。

「何で言わせないんだ。どこの家だって財産は息子に行くもんだろ。俺は息子がいないだけで、もし息子がいたら、俺だって……」

その言葉が途中まで出たところで、部屋にいる数人の表情が一斉に変わった。

山本健一は自分が言い過ぎたこと、本音を口にしてしまったことに気づいた。

「美咲ちゃん、...

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