第102章

少年は的外れな問いを返す。「優子は好きか?」

唐沢優子は少し考えてから、頷いた。「好きよ。私が生きてる世界だもの」

 ここは彼女が物心ついた時から生きてきた場所だ。

 たとえ思い通りにならないことがたくさんあっても、唐沢優子はやはりここが好きだった。

 アメフラシは外の景色を隅々まで見つめ、道中のルートを脳裏に焼き付けていく。

 これは飼い主が生きる世界。

 ここのどの場所も、彼女が来たことのある場所だ。

 少年が窓の外を一瞬たりとも見逃すまいと見つめている間、唐沢優子は俯いて資料に目を通していた。まさかその僅かな時間で、アメフラシがその美しい顔立ちのせいで交通事故を引き起こし...

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