第46章

 彼は無表情のまま、心の中で時間を数えながら待っていた。

「まだかかるのか?」

「ん……もうすぐだ」

 そう遠くない椅子から、息の乱れた掠れ声が聞こえてくる。

 アメフラシは最初、彼が何をしているのかと訝しんだ。

 その濁った血のように赤い目が彼をじっと見つめ、体は過熱したガラスシャーレのように、次第に温度を上げていく。

 だが、彼に興味はなかった。

 飼い主以外に、余計な好奇心は持ち合わせていない。

 少年が水に沈もうとすると、その細く白い手が水を掻いたところで、男に呼び止められた。

「まだ入るな。俺にお前を見させてくれ」

 男の体は震え、水槽の真向かいにある簡易ベッド...

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